旅の余韻に、博多の口福(こうふく)。

――あの鞄から届く、博多の馳走。

1. 博多 ふく富の「こだわり明太子」
――「辛さ」の先にある、職人の矜持

博多に明太子メーカーは数あれど、「ふく富」の名を耳にすると、少し背筋が伸びるような心地がする。ここの明太子は、単なるお土産の枠を超えた、職人気質の塊だ。

特筆すべきは、その徹底した素材への目利きと、独自の漬け込み技術。一口含めば、プチプチとした完璧な粒感が弾け、その後を追うように滋味深い旨味が広がる。

多くの明太子が「唐辛子の辛さ」を前面に押し出す中、ふく富は違う。辛さはあくまで旨味を引き立てる名脇役。厳選された魚卵のコクを、独自の調味液がじわじわと引き出している。白米に乗せた瞬間、米の熱で香りが立つあの瞬間は、博多の記憶を鮮烈に呼び覚ます。

ごはんと明太子

2. やまやの「いわし明太子」
―― 脂の乗った鰯と、明太子の幸福な結婚

博多の屋台や居酒屋でこれに出会って以来、我が家の冷凍庫の常備品となったのが、「やまや」のいわし明太子だ。大ぶりで脂の乗った国産のイワシ。そのお腹に、これでもかと贅沢に明太子が詰め込まれている。

 

焼き上がりの儀式
じっくりと弱火で焼き上げると、イワシの良質な脂がジュワジュワと染み出し、中の明太子に火が通ってふっくらと膨らむ。
味わいのコントラスト
イワシという青魚特有の力強い旨味とほのかな苦味。それを品よく包み込むのが、やまや自慢の「匠のたれ」仕込みの明太子だ。

これはもう、白米だけでは受け止めきれない。冷えた日本酒、あるいは濃いめの焼酎のロックをあおるための、大人のための逸品である。

いわし明太子と焼酎

3. 九州丸一食品の「ごま鯖」
―― 博多の夜の熱気を、そのまま自宅へ

博多の居酒屋に座って、まず注文するものといえば「ごま鯖(さば)」を置いて他にない。あの甘辛い醤油とすりごま、そして新鮮な鯖のハーモニー。 しかし、足の早い鯖を土産にするのは至難の業……そう諦めていた私を救ってくれたのが、「九州丸一食品」のごま鯖だった。

この一品には、圧倒的なクオリティを支える3つの理由がある。

まず何よりも、「鮮度へのこだわり」だ。水揚げされたばかりの新鮮な鯖を、独自の技術で素早く加工しているため、生魚特有の臭みは一切ない。
そこに合わせるのが、「特製タレの妙」。九州ならではのコクのある甘口醤油をベースに、豊かな胡麻の香りを贅沢にプラスしており、鯖の旨味を極限まで引き立てている。 そして最大の魅力が、その「再現度」の高さ。特別な調理は一切不要で、冷凍庫から出して解凍し、器に盛るだけで、まるで博多の銘店のカウンターで食べているかのような本格的な味わいがそのまま食卓に蘇る。

一口食べれば、コリッとした鯖の食感と、濃厚なタレの旨味が口いっぱいに広がる。ネギとワサビを少し多めに添えれば、そこはもう天神や中洲の路地裏だ。旅の終わりを惜しむ夜、自宅の晩酌がこれほど贅沢になる選択肢を、私は他に知らない。

ごまさばとお酒

添乗員 遠見が出会った博多の輝きはコチラから>>

旅の余韻を、鞄に詰めて

博多の食文化の凄みは、その「日常の延長線上にある贅沢」を、旅人にそのまま持たせてくれる懐の深さにある。

新幹線が動き出し、車窓の明かりが遠ざかる。バッグの中には、ふく富の明太子、やまやのいわし明太子、そして丸一食品のごま鯖。

明日の夜、自宅でこれらを開けるとき、私の旅は本当の意味で、もう一度始まるのだ。

明太子とお酒